2009年06月21日

『ノートに印刷された名前』



今日は、ある本からの実話『ノートに印刷された名前』を要約して、御紹介致します。



この世の中には、名前による不思議な体験をした事で、自分に与えられた使命や自分の天職に目覚めたという人もいる。


アメリカのスティーブン・ダイアモンドと言う名の作家が、若かった頃に体験した話である。


スティーブンは若い頃、たった10ドルの所持金で、夢を抱き、憧れのサンフランシスコに来た。しかし、彼には薬物中毒後遺症があり、上手くいかなかった。


やがて、手持ち所持金を使い果たし、食べ物にも困るようになった。彼は極度の空腹感に襲われながら、なぜか、不思議な衝動にかられていた。


「なんだか不思議な気持ちだ。そうだ、今のこの気持ちを何かに書き留めておきたい」空腹感を通り越して、正常な思考を失っていたのだろうか。


しかし、ノートもペンもなく、追い込まれた彼の目にコンビニエンスストアが目に入った。彼は、あろう事かその店でノートとペンを万引きしようと考えたのであつた。


もはや正常な思考でない彼は、店内を物色したが、監視が厳しく嫌気がさし、何もせず店を出た。最後に良心がとがめたのだ。


スティーブンは、今の愚かな行為に益々惨めになった。「ああっ、情けない。俺は何てダメな男なんだ」そう、つぶやきながら、公園を横切ろうとした。すると、道端のゴミ箱の所に、古着や靴等に混じって、一冊のノートが置いてあるのが目についた。慌ててノートを手に取ってみると、まだ未使用部分が沢山あった。


欲しかったノートが手に入った幸運を、彼は喜んだ。そして、再度ノートを見ると、それは医師が診断の時にメモに使うノートである事がわかった。


更によく見れば、どの用紙の上端にも、そのノートの持ち主らしき医師の名前が印刷してあった。しかし、その印刷された名前を見て、彼は思わず驚きの声を上げた。


「ええっ、医学博士スティーブン・ダイアモンドだって?!」彼は慌てて、もう一度その名前を確認した。何とそのノート用紙には『医学博士スティーブン・ダイアモンド』と印刷されていたのだ。


「間違いない。これは私と同じ名前だ!」彼は、この不思議な偶然に衝撃を受けた。


なぜなら、両者とも同じ名前でありながら、一方は医学博士で、このようなノート用紙にまで名前を印刷する身分、それに比べ自分は何と惨めな事だろう。ノートやペンを買う金もなく、挙げ句の果てに万引きしようと考えていたのだ。彼は、たまらなく自分が恥ずかしくなった。


「ようし、決めたぞ。俺もこの人に負けないように頑張ろう!」スティーブンは、この不思議な体験により、もう一度自分の人生をやり直そうと決意したのであった。


彼は早速、心から溢れる衝動をノートに書き綴った。元々彼には文才があったようで、直ぐに一冊の本になる位の文章を書き上げてしまった。


そして、彼が書いた文章は『木が教えてくれたこと』と言うタイトルの本になり、その後、ベストセラーとなったのである。


不思議な名前の偶然により、彼は天職に目覚める事が出来、ここにスティーブン・ダイアモンドと言う作家が生まれたのだ。


それにしても、落ちぶれていた彼を立ち直らせて、しかも天職に目覚めさせたのが、自分と同じ名前の人物だったとは、実に驚きである。たんなる偶然かもしれない。しかし、名前に導かれた何か運命的なものを感じさせられる出来事である。





※人生、捨てたもんじゃないですね!最後まで、諦めず、前に進みましょう。
  


Posted by makishing at 06:07Comments(6)