2019年08月18日

想う甲子園『1992 年夏、明徳義塾3-2 星陵』


今日は、8月15日(木)読売新聞、スポーツ欄より【想う甲子園『1992年夏、明徳義塾3-2星陵』】を紹介致します。





甲子園の名勝負にはいろいろな要素がある。実力伯仲の延長戦だけではない。戦力が劣るチームがルールの範囲内で様々な創意工夫をして強豪校を破るのも高校野球の魅力だ。1992年夏の明徳義塾(高知)の戦い方は象徴的だと思い、高知や石川で関係者に会って取材を重ねた。

相手の星陵(石川)は4番に松井秀喜、エースに山口哲治両選手がいて優勝候補の筆頭。一方で明徳義塾はエースがひじの故障で投げられず、満身創痍だった。馬淵史郎監督は本来は外野の選手をマウンドに送ったが、彼が松井を抑えられるとは考えていなかった。

勝敗の帰すうを松井と勝負をせざるを得ない状況に追い込まれるか否かに設定した。松井の次の5、6番打者を徹底的に分析して弱点を見いだした。対角線を揺さぶり、最後は外角低めのカーブをひっかけさせて抑えられると。これで松井の敬遠策が成立した。

第1〜第3打席に続き、七回二死走者なしでも敬遠。九回二死三塁も敬遠して最後は5番打者を狙い通りに三塁ゴロに仕留めた。

球場は騒然。あの雰囲気のなかで、普通の監督なら方針も揺らいだはずだ。しかし、馬淵監督は信念を貫き、試合に勝った。そこがすごい。5打席連続敬遠には批判もあったが、私はこの試合を歴史に残る名勝負に挙げたい。

昨夏も9人だけで戦ってきた金足農(秋田)が全国制覇まであと一歩に迫った。大阪桐蔭(大阪)のような強豪校ばかりが勝つのだったら、高校野球の人気はここまで高まっていない。

(語り:作家ジャーナリスト、門田隆将さん、聞き手:古谷禎一さん)





※星陵高校の松井秀喜選手の、対明徳義塾高校戦の‘5打席連続敬遠’は、知る人ぞ知る、今も語り継がれる勝負です。

実はこの試合、私はレフトスタンドに居ました。5打席目が敬遠になった時、観衆は口々にヤジを飛ばし、モノをグランドに投げ込む人を、何人も見ました。

物議をかもしたこの試合も、高校野球史に残る勝負だと思います。

今日の甲子園は、8強が全て出揃う、準々決勝。球児たちの大活躍を、期待しています。
  


Posted by makishing at 08:11Comments(0)